“一匹狼ライター”だった私に、ライターの心構えと仲間を与えてくれた場所。

ブックライターとして活躍するほか、『「話す」は1割、「聞く」は9割 どんな人とでも会話が途切れない究極の方法』(大和出版)、『人生が変わる会話術』(ごきげんビジネス出版)などの著書もある丘村 奈央子(おかむら・なおこ)さん。

「聞き方」をテーマにしたセミナーやYouTubeチャンネルなど、その活動はライターの枠を超えて実に多彩です。そんな丘村さんに、ブックライター塾との出合いや、塾を通じて得られたことをお聞きしました。

丘村奈央子(ブックライター塾2期生)
取材/堀尾大悟(ブックライター塾6期生)  
写真/上田修司(ブックライター塾2期生)

「聞く」ことの楽しさに気づき、ライターの道へ

「聞く」ことをテーマにした著書も多数出されている丘村さんですが、「聞く」ことはもともと得意だったのですか?

いえ、得意どころかまったくの苦手で……(笑)。人の話も聞かず、一方的に持論をぶつけるタイプの人間だったんです。ライターとして独立する以前は電機メーカーで社内報の編集に携わっていたのですが、上司の編集方針にどうしても納得がいかず、何度も衝突していました。

でも、ぶつかり続けていても仕事は一向に進まず残業ばかり。そこで「自分が知らない事柄なら、相手の話を聞いてみよう」と思い、上司が映画の話をしたときに「どういう監督なんですか?」「どこが観どころなんですか?」と質問を返してみました。すると、いつもケンカしていたその上司が気持ちよく話してくれて自分も映画の知識が得られた。話す側、聞く側の双方にいいことがあると気づいたんです。以来、苦手だった「聞く」ことを自分なりに試行錯誤しながら実践し、それをメソッドとして言語化していきました。それが、本やセミナー、YouTubeといったアウトプットにつながっています。

「聞く」楽しさを知ったことが、今のライターとしてのご活躍の原点なんですね。

そうですね。苦手だし興味もなかった「聞く」ことが、自分の中でどんどん楽しくなっていって。もともと好きだった「書く」ことに「聞く」ことをプラスして、職業にできたらもっと楽しいだろうなと思い、ライターとして独立を決意しました。

また、電機メーカーには生産ラインの導線を考えている人や物流に携わる人など、縁の下で貢献している人たちがたくさんいます。でも、月1回の社内報では製品開発やCMなど華やかな話題ばかりが優先されてしまう。ライターになったら地道に働いている人たちの存在も広く知ってもらえるお手伝いができるのでは、と思ったのも動機のひとつです。

大量の宿題に苦戦…講師陣からのフィードバックが糧に

ブックライター塾を知ったきっかけを教えてください。

独立してから、幸運にもある方の著書のブックライティングをさせていただく機会に恵まれました。なんとか一冊の本にまとめたのですが、それまで出版業界の経験がないままライターの仕事を始めたので、当時はまったくの我流。周囲に手ほどきをしてくれる人もおらず、「自分のやり方が本当に正しいのだろうか……」と不安を抱えていました。

そんな折、書店で上阪徹さんの著書『職業、ブックライター。毎月1冊10万字書く私の方法』(講談社)を見つけ、上阪さんが主宰するブックライター塾の存在を知りました。プロ中のプロがどのように一冊の本を書いているのか知りたかった私には、まさに「これだ!」という思いでしたね。

また、上阪さんが「ブックライター」という新しい言葉とともに、著者に代わって文章を書くという仕事の意義をポジティブに語っていたことにも感銘を受けました。

上阪さんの著書との出合いもあり、2期生としてブックライター塾に入塾します。

出版業界に知り合いもいないまま、ずっと“一匹狼”でライターの仕事をしていたので、初日に同期の受講者に出会って「同じライター仲間がこんなにいるんだ」と、まずはほっとしましたね(笑)。

講義の後に課される宿題は質も量もとにかく濃厚で……毎回苦戦していました。上阪さん、唐沢暁久さんといった第一線の講師陣からのフィードバックは、時にはバサッと切られて(笑)、凹まされることもありましたが、貴重な気づきを与えてくれました。褒められたときは「この書き方でよかったんだ」と自信にもなりました。

また、自分が書いた文章と他の塾生の文章とを見比べることができたのも、塾ならではの貴重な体験でしたね。自分が使わなかった素材を活かしている人、自分が苦手な“エモい”表現で味つけしている人……一つの課題に対して、素材の選び方や書き方がこうも違うのかと、いろんな視点に気づかせてくれました。

受講中に、印象に残っている出来事はありますか?

ある講義の冒頭で、上阪さんがいきなり怒ったことがあったんです。「課題の締切を守らない人が多い。これでは社会人としての信用を失いますよ!」と、かなり強い口調で……。ライティングの技術以前に、社会人として仕事を受ける人としての心構えを責任をもって教えてくれる。社会に出て一定のキャリアを積むと周りに叱ってくれる人がいなくなるので、ありがたかったですね。

卒塾後もライター仲間や編集者と交流できるコミュニティ

ブックライター塾を受講して得られたことは何ですか?

上阪さんの長年の経験をベースにしたブックライティングのメソッドは、もちろん大きな財産です。取材の仕方、情報の整理の仕方、設計図の作り方……すべて今の仕事に活かされています。

また、卒塾後も上阪さんをはじめ、卒塾生のライターや講師陣、編集者の方々と交流できるコミュニティがあります。Facebookのグループで悩みを共有したり、困ったことがあれば質問することもできます。フリーランスの立場にとってこれほどありがたいことはありません。

このコミュニティでのご縁から、その後のお仕事につながることも増えました。ライター仲間が仕事を紹介してくれたり、名刺交換をしてから数年後に声をかけていただくこともあります。受講する以前に比べてネットワークが格段に広がりましたね。

最後に、このサイトをご覧になっている方へのメッセージをお願いします。

ブックライター塾で学べる文章の組み立て方のノウハウは、ブックライティングに限らずウェブ記事やオウンドメディアの記事など、少し長めの文章を書く際に広く活用できます。大量の宿題を前に悲鳴を上げることもありますが(笑)、全4回と短期集中で取り組めますし、取り組んだぶんだけ間違いなく自分の糧になります。

今、あるブックライティングを手がけているのですが、その本は書店に並ぶものではありません。依頼者の方が自分の子どものためにメッセージを遺したいと、私に依頼してくださった「世界に一冊だけの本」なんです。

その人の思いを、その人に代わって形にしていく――ライターが活躍できるフィールドは、思っている以上に広いと日々実感しています。ぜひ多くの方に、ブックライター塾でライターの第一歩を踏み出してほしいですね。